2019年9月27日、ソウルの世宗文化会館世宗ホールにおいて、「日韓識字教育強化のための国際シンポジウム」が開催されました。参加者は、約500人(参加者の9割は学習者)。日本からは識字学習者6人をはじめ、25人が参加した。
これまでのながれ
今回のシンポジウムにつながる交流は、2017年からはじまりました。トヨタ財団の助成を受けて、「トヨタ財団 国際助成プログラム 日韓基礎教育共同プロジェクト」が立ち上がりました。さまざまな交流・研究事業が進められ、2019年3月27-29日には、福岡で「日韓識字学習者による共同宣言づくりのためのワークショップ」を開催。日本側から8人、韓国側から9人の学習者が参加し、3日間にわたって話しあい、そのやりとりをもとに「日韓識字学習者共同宣言」が生まれました。
日韓識字教育強化のための国際シンポジウム
韓国では、9月を識字月間とし、全国各地で活動している学習者やスタッフが毎年1回集まり、「よみかきこうりゅうかい」を開催しています。今年は第17回目の「よみかきこうりゅうかい」。このこうりゅうかいと同時開催するかたちで日韓識字教育強化のための国際シンポジウムが開催されました。
「式前行事」は、学習者による発表からはじまりました。4つの地域の代表たちが舞台にあがり詩を朗誦したり、劇をしたりしました。たとえばプルンオモニハッキョが所属する地域の演劇では、学習者がいろいろな学習者の役を演じ、ふだんの識字学級のようすを演じました。それを見ていた参加者は大笑いしたり、掛け声が飛び交ったりして盛り上がりました。さいごに学習者役の人たちが生い立ちを綴った文章を読み上げた。会場は静まり、一人が読み終わるたびに拍手がわきおこりました。
「シンポジウム」は、日本側上杉孝實代表と、韓国側キム・インスク代表(代読)の開会メッセージから始まり、来賓のあいさつへと続きました。来賓のお一人、国会議員ソ・ヨンギョさんは、地域の識字教室(夜学)で長く活動してきた人でした。彼女が参加者に投げかけることばひとつひとつに、参加者から返答があり、会場の熱気は高まりました。
その後、韓国側からイ・ジヘさん(翰林大学)が韓国の識字について報告し、日本側から森実さん(大阪教育大学)が日本の識字の課題を報告しました。
次いで、政府関係者・識字運動関係者ら6人のパネリストによるディスカッションがはじまりました。そして、最後に共同宣言が発表されました。ステージにあがった日本と韓国の学習者が宣言文を読み上げ、最後に、参加者が要求項目のシュプレヒコール。
「日韓識字学習者共同宣言」(日本語版・韓国語版・英語版)は識字・日本語センターウェブサイトにも掲載しています。テキストはウェブサイトに掲載し、PDFファイルはダウンロードして活用していただけるようにしています。
ぜひ、教室や学校で読んでください。ぜひ、多くに人に届けてください。
※本報告では「文解」を識字として表記している。文解とは、英語でいうLiteracyを韓国語に訳したことばです。文解とは、文章を理解するようになること、文化を解放することなどを意味している。Literacyは、日本語では、識字と訳されています。
参考
- 「トヨタ財団 国際助成プログラム 日韓基礎教育共同プロジェクト」ウェブサイト(http://asia-net.jasbel.org/)
- 「日韓識字学習者による共同宣言づくりのためのワークショップ」の報告
識字・日本語センターウェブサイト(https://call-jsl.jp/learn_fl/)