第6回の講座ではこれまで実施した5教室の講師に集まってもらい、参加者とともに講座をふりかえりました。その後、グループにわかれて総括的な話し合いを行い、今後の識字・日本語教室の取り組みについて交流しました。
☆事業をとおして
料理などを中心に据えた事業について、3F(food/fashion/festival)などと批判されることがありますが、本事業はそれとは異なります。事業を実施した教室の学習者が中心となって教室みんなでその事業をつくりあげます。料理を通して、交流を深めるだけではなく、講師から生いたちや生活、そのなかでの思いなどについても語ってもらっています。
料理はこれまでのくらしのなかで、講師にとってなじみのある料理にしてもらいました。生まれ育った地域で食べていたもの、集会などに行く際によくつくられたものなどです。参加者と一緒に食べた後は、講師の話を中心に、部落差別問題、外国人差別問題、障害者差別問題などについて話しあったり、これまでの生い立ちのなかでの困難や識字・日本語教室でのことについて話し合いました。
☆事業の成果
まず第1に、料理を足がかりに、学習者が主役となり、料理だけではなく自分たち自身のことを語ってもらったという点でです。学習者が主役になるという点がしかるべく達成できたことは、第6回の参加者の半数以上が学習者だったことからもわかります。参加した学習者のなかには、ボランティアが来なくても参加した人たちが少なからずいました。
第2に、その学習者たちが識字・日本語学習のあり方について問題提起したことでです。第6回では、まず登壇した人たちから意味のある発言が相次ぎました。登壇したのは、いずれも各回で講師を担った人たちです。そのなかには「今回料理を紹介する活動をしたが、それが自分の強みであると改めてわかった。今後は、調理学校に通うなどして、本格的に料理の道に進むことも考えたいと思った」と発言した人もいました。また、日本に来てから直面した外国人差別の体験を語る登壇者もいました。さらに、教室で日本語を身につけられるようになったという人に対して、別な登壇者が「頑張り過ぎなくていい、一番重要なのはまわりの日本人たちがきちんとその人を受けとめ理解して、対等な関係を組み立てようとしているかどうかだ」と言う一幕もありました。登壇者の一人は、「次回講座をするときには、地域のことや生い立ち、結婚差別、部落差別について話す時間をもっと長く取ってほしい」と述べて、主催者にリクエストしました。これらのことはいずれも、学習者がもっと主役となっていろいろな取り組みを進めるべきことを示しています。
第3に、この講座は改めて部落差別問題や外国人差別問題、障害者差別問題などを考える機会となり、多文化共生のまちづくりを進める機会となったことです。
第4に、今後の課題として、広報活動をかなり行いましたが、教室によっては、地域からの一般参加者が少なかったところがありました。各教室は、50年以上の歴史を持ちますが、まだまだ地域の人びとにその存在が知られていないところがあります。
今回の取り組みでは、区役所でのチラシの配架や広報誌に掲載してもらうなどして、識字・日本語教室の存在を市民にアピールしました。地域からの参加が少なかった教室には、ふだんからの地域連携についてさらに考える必要があるかもしれません。しかしこの点も、教室の努力というよりも、地域の側がどれだけ関心を持って教室に関わっているかという点を考えるべきであり、そのために行政をはじめ、関係者がどれだけ地域参加につながる事業を展開して後押ししているかが問われていると言えると思います。たとえば、ボランティア入門講座などの一般市民向け研修を都心で開くだけではなく、それぞれの教室が行われている場所で開くだけでも違ってくるでしょう。
☆今後の展望を考えるため
最終回に出されたアンケートから、いくつか言葉を引用しておきたいと思います。「みなさんの色んな体験(昔のはなし)を聞けて、自分もそのなかの1人だと思い、とてもよかった」「みなさんの自分のことを聞いてかんどうしました」「言葉より伝わることがあることを改めて思いました。いっしょにつくることでつながることができる」「パートナーが急きょ不参加になりましたので不安でした……最初はあっち行き、こっち行きしてウロウロしてもう今後行きたくないと思ったけど!!でも大丈夫です。今後交流会があれば参加していこうと思います。今日参加して楽しい気持ちになりました」「○○さんの勉強の仕方を聞いて、勉強になりました」「80才になり足も悪いのですが、、いろんなところに行ってみたいと思います」
その他、参加者からは、もっとゆったりとした時間を取って事業を展開してほしいという希望が出されています。内容としても、料理だけではなく、広く文化活動をする、他の地域にフィールドワークに一緒に出かけて交流する、遠足をいっしょにして交流する、などがあげられています。識字・日本語センターとしては、今後も各地域における識字・日本語学習のサポートをするために、情報発信や学習機会の提供などに努めていきたいと思います。
◆2023年識字・日本語センター連続講座
「学び、楽しみ、交流しよう識字学習者のくらしと料理から考える多文化共生」
本事業は、「2023年度大阪市NPO/市民活動企画助成事業」の助成を受けて実施します