識字・日本語センター

識字・日本語連絡会第28回総会、第7回識字・日本語学習研究集会全体会が開かれる

研究集会テーマ
「だれのための識字・日本語学習?~コロナ・人権・差別事象から今後を考える~」

7月10日(土)、すみよし隣保館寿で、識字・日本語連絡会総会と第7回識字・日本語学習研究集会が開催された。識字・日本語連絡会第28回総会では、代表幹事の森実さんが2021年度の方針として差別事象へのとりくみと新型コロナパンデミックへの対応を大きな柱とすることを訴えた。具体化として、①教室のボランティアを対象とした意識調査の実施、②人権学習教材持ち寄りワークショップ(5回)の開催、③人権学習モデル教室によるとりくみ、という3つを提案した。事前に加盟団体等には書面決議により賛同を得ており、さらにこの日の会場での討論を受けて、この方針が確認された。

総会終了後に開催された研究集会には、会場での対面とウェブによる参加をあわせて132人が集った。全体会のテーマは、「だれのための識字・日本語学習?~コロナ・人権・差別事象から今後を考える~」である。大阪教育大学名誉教授でもある森実さんが再び登場してテーマに即して提案した。「識字・日本語教室の学習者には、新型コロナウイルス感染症に関連して特定定額給付金やワクチン接種などの情報が入ってきにくい。不利益を受けるようなことがないよう、学習者の立場に立ってつながれる場所、学べる教室が必要だ。また、2019年のよみかきこうりゅうかいで起こった差別事象を受けとめ、安心して学べる場所を広げるため、人権学習の活動や教材づくりを共にすすめよう。2022年は全国水平社創立、「水平社宣言」から100年である。さらにはSDGsも取り組まれている。これらを参考に、識字・日本語教室で何を大切にするのかを改めて発信することが求められている」と述べた。

 

その後、大阪市内の2教室の学習者から発言があった。
日之出よみかき教室(木曜日)からは、まずAさんが発言した。Aさんは、30年以上にわたって日之出よみかき教室に通っている。コロナにより教室の休講が余儀なくされた際、「早く教室を再開してほしい」と大阪市教育委員会の識字担当に何度も電話した。教室がないと教室のメンバーとも会えなくて寂しいし、学びたいからだ。この1年間ほど、毎日日記を書き続けており、休講中も、自分の日常を日記に書き綴った。この日記を綴ったノートは、すでに何冊かになっている。
次いで、ベトナムから来たBさんが話した。北海道のホテルで働いていたが、職場での人間関係にしんどさを感じていつも泣いていた。それに加えてコロナにより、ホテルが廃業になったため、失業した。日本に来るために借金をし、そのローンを返さなければならないのにどうなるのか、ベトナムに帰りたいと何度も思ったが、自分は帰らず前に進まないといけないと思いなおした。次は兵庫県の工場に転職した。働く時間はバラバラで長時間だったため、日本語教室に通うこともできなかった。いつも仕事ばかりでストレスがとても溜まっていた。大阪で仕事を見つけることができたので、転職した。友だちが日之出の教室を紹介してくれたので、行くことにした。通いだすと日本語だけではなく、いろんなことが学べた。風呂敷をつかっての環境のことを学んだり、困ったことがあったときすぐに相談に乗ってくれたり。外国人として暮らすとき、困ったことを相談できる場はとても大事。だからもっとこういった教室が広がってほしいと思っている。
同じくベトナムから来たCさんは、教室について印象深いことを4点にまとめて話した。一つには、特別定額給付金についてまったく知らず、教室のボランティアに教えてもらい、また手続きにも協力してもらってようやく給付を受けることができた。2つには、自転車保険に入ろうとしてインターネットでも調べたがよくわからなかった。それを教室で相談したところ、いろいろな情報をもらい、他の保険についても学ぶことができた。3つには、この3月におなかの具合が悪くなり、薬を飲んでも治らなかった。病院で内視鏡検査を受けたが、その説明を聞くときに教室のボランティアが一緒に行ってくれた。大きな病気ではなく、安心することができた。4つには、コロナのワクチン接種の予約方法を教室で知ることができた。「日之出よみかき教室(木曜日)は、教室だというだけではなく、二番目の家族のように感じる」としめくくった。

 

その後、住吉輪読会のDさんが2019年に起こった差別事象を中心に発言した。差別事象があったと聞いたが教室では聞くことができなかったので、尋ねたが、まだ整理できていないからと教えてもらえなかった。学校の教員や行政の人はどうして差別とわからず、すぐに動いてくれなかったのか。同時に、つい先日にも、地域でよみかきに困っている人と出会い、識字問題はまだまだこれからなのだと思った。差別事象についても、識字活動の広がりについても、しっかりとした取り組みを求める発言だった。
会場からは、時間がギリギリになるまで発言が相次いだ。たとえば「初めて学習者の生の声を聞いた」という行政職員の感想があった。また、夜間中学の教員からは、夜間中学でも新型コロナに関連して生徒さんたちへの支援活動をしているという報告があった。
この全体会を受けて、2022年2月5日には、分科会が行われる予定である。新型コロナの広がりにより、具体的な形はまだ打ち出せていないが、大阪教育大学では、多くの人が参加できる方向を模索している。