【報告】識字・日本語連絡会第30回総会

と き  2023年5月27日(土)午後1時30分から午後4時(受付:午後1時から)
ところ  大阪教育大学天王寺キャンパス 東館1階 講義室2

第1部 総会

全体進行  事務局長 岡田 耕治

[1]主催者挨拶  代表幹事 森 実
今年は第30回の総会ということで、記念すべきタイミング。1989年にこの連絡会ができてから、その後数年途切れたことはあるが、継続して今日まで総会を重ねてきた。この30回という区切りのタイミングで、2021年度に行った識字・日本語教室ボランティアの意識調査及び中学校夜間学級教職員の意識調査の報告書ができている。1200人ぐらいの方から回答をいただき、その中身を分析しながら今後の課題の整理をこの2年間積み重ねてきた。
この報告書にはWeb版と紙版があり、Web版が100ページ程度なのに対し、紙版は200ページ以上ある。自由記述に関するところがWeb版では省かれている。自由記述はそれぞれの方が思いを込めて書いてくださっているわけだが、中には、解説や説明を付加しないと誤解を招くものも含まれていることがあり、Webアップをするのは控えた。自由記述を読んでみたいと思われる方は、ぜひ紙版を手に入れて読んでいただければと思う。私も携わっており、自由記述をいろいろ読ませてもらった。深みのあるというか、刺激的というか、時には落ち込み、時には元気にしてもらえる様々な記述があり、今現場はこうなっているということが、数字とは違う形で浮かび上がってくると感じている。
今回の総会では、この調査を踏まえてまとめた提言を軸にしながら後半をすすめたいと思っている。この場におられる全ての方から、調査・提言あるいは方針などについて、ご意見を出していただければと思う。
大阪府、大阪市、堺市の方には、この調査の実施にあたってお世話になり、その後の取組を進める上でもお世話になったので、改めてこの場でお礼申し上げる。これから提言に基づいてお願いをしていくことになるので、これまでにも増して協力体制を作っていただき、進めていただければありがたいと思っている。

[2]来賓挨拶 
池上 成之(大阪府教育庁市町村教育室 地域教育振興課長)
比嘉 直子(大阪市教育委員会事務局生涯学習部 生涯学習担当課長)
脇田 善久(堺市市民人権局ダイバーシティ推進部 ダイバーシティ企画課長)


 

大阪府教育庁市町村教育室 地域教育振興課長 池上 成之

識字・日本語連絡会第30回総会の開催にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
皆様におかれましては、日ごろから大阪府内の各地域で、識字・日本語活動を通して社会教育の推進にご尽力いただいておりますことに、心から敬意を表します。また、このようにたくさんの皆様のご参加のもと、本総会が開催されますことを心からお慶び申し上げます。
さて、コロナ禍の中、学習者や学習支援者の皆様は、長い期間に渡り、識字・日本語教室での活動にご苦労されてきたことと存じます。そのような中でも、様々な工夫をしながら楽しく、温かな教室を運営するとともに、日本語の読み書きだけでなく、多様な「学び」を大切にされてきました。
様々な影響を及ぼしてきた新型コロナウイルス感染症は、5月8日から5類感染症への位置付けに変わりましたが、ウイルスがなくなったわけではありません。今後も有効とされる感染対策を行いながら、引き続き、明るく、楽しく学習活動を続けていただきたいと思います。
大阪府では、大阪府識字施策推進指針(改訂版)を踏まえ、識字施策の推進に努めており、大阪識字・日本語協議会が平成28年3月にまとめた「大阪府における識字・日本語学習における課題整理報告書」に基づき、課題を解決するための取組を進めてきたところです。
今年度も、識字・日本語教室において、大阪府職員が説明者となり、「大阪府作成教材を用いた学習支援の概要」や「教室運営者や学習支援者に必要な人権意識」等について出前形式の講座を実施することにより、教室運営者や学習支援者に広く学習機会を提供し、教室の取組や運営をサポートしていきます。
また、文化庁補助事業を活用し、大阪府内の市町村が行っている識字・日本語学習に係る活動に対する補助も行います。これらの取組により、引き続き識字・日本語教室への支援を図ってまいります。
最後になりましたが、貴連絡会のますますのご発展と皆様のご活躍を祈念いたしまして、ご挨拶といたします。本日は誠におめでとうございます。


 

大阪市教育委員会事務局生涯学習部 生涯学習担当課長 比嘉 直子

識字・日本語連絡会第30回総会の開催にあたりまして、ごあいさつを申しあげます。
市内識字・日本語教室では多くの学習支援者と学習者の方々が、「共に学ぶ」場として、生き生きと活動し学習を積み重ねてこられています。皆様方のご熱意とたゆまぬご努力に深く敬意を表しますとともに、改めてこれまでの取組にお礼申しあげます。
さて、5月8日より新型コロナウイルス感染症が感染症法上で2類相当から5類感染症に位置付けられ、様々な制約が緩和されたことで私たちの日常もコロナ前の状況に少しずつ戻りつつあります。
大阪市の外国人住民数は2022年12月末で152,560人となり、コロナ前の2019年12月末時点の145,857人を上回り、日々教室参加の問合せが入っている状況です。
私も先日、一つの教室を訪問した際に、学習者の方から「識字教室がよみかきの学びの場としてだけではなく、安心して自分の気持ちが話せる大切な場所である」と伺いました。
平成5(1993)年に本市の策定した大阪市識字施策推進指針で示される「識字は人間が人間として自らを解放していく営みである」とともに「社会の主体的な構成員として、その社会自身をより良いものへと作り変えていけるような、一連の知識、資質、技能、態度、能力、これらを身につけて行く取り組みの総体のことである」という理念が今も実践されていると感じる次第です。
本市におきましては、(仮称)識字・日本語教育基本方針の策定準備をすすめております。市民局、経済戦略局等関係各所と連携し、識字施策推進指針の理念を継承した識字・日本語学習体制の検討を行ってまいります。
今後とも、皆様方との連携を深め更に識字・日本語施策の充実に努めてまいる所存でございますので、引き続きご協力をよろしくお願いいたします。
最後になりますが、識字・日本語連絡会の益々のご発展をお祈り申しあげまして、ごあいさつといたします。


 

堺市市民人権局ダイバーシティ推進部 ダイバーシティ企画課長 脇田 善久

平素から、識字・日本語連絡会の皆様には、識字・日本語の様々な学習活動にご尽力いただき、心から敬意を表する次第でございます。
また、本日は、識字・日本語連絡会第30回総会が開催されますことを心からお慶び申し上げます。
さて、いまも続く、ロシアによるウクライナ侵攻により、多くの方々が平穏な日常とはほど遠い暮らしを余儀なくされております。
本市では、国や大阪府と連携して、ウクライナから避難された方々が安心して生活いただけるようワンストップ相談窓口を開設して、市営住宅の無償提供をはじめ、就学支援、日本語学習機会の提供などの取組を進めております。
昨年度、本市の識字・日本語教室では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中でも、オンラインを活用した新たな学習や交流の形を取り入れながら、ボランティアの方などのご協力により教室運営を行いました。
地域における識字・日本語教室は、文字や言葉の読み書きを学ぶだけでなく、孤立感や不安を解消する居場所となっております。日常生活で困ったことがあれば、身近に相談することができ、行政につながる場としても、大きな役割を果たしているものと認識しております。
今後とも、皆様方並びに地域の識字・日本語教室との連携を深め、識字・日本語施策の推進に努めてまいります。
結びに、識字・日本語連絡会の、ますますのご発展と、関係者の皆様方のご健勝を祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。

[3]議長選出 
副代表幹事 岩槻 知也、幹事 熊谷 愛※ 選出
※熊谷幹事は第3号議案承認以後、副代表幹事に就任

[4]議事
第1号議案  2022年度 活動報告に関する件
第2号議案  2023年度 活動方針に関する件
第3号議案  2023年度 役員・加盟団体等に関する件

・第1号~第3号議案を森代表幹事が一括提案
・質疑なく全員拍手により、第1号~第3号議案一括承認

[5]総会閉会

第2部 提言

全体進行  事務局長 岡田 耕治

[1]提言についての提案
全体説明  代表幹事 森 実
この提言は、2021年以来、調査を行いその分析を行い、その一方で、人権学習プログラムの創造活動を重ねてできたもの。タイトルは『人権に根ざした識字・日本語学習をめざして』であり、識字・日本語連絡会、調査分析に携わったメンバー、活動に普段から関心を寄せてくださった皆さんが集まって、かなりの回数、何度も重ねてきた議論を最終的に上杉さんがまとめてくださったのがこの提言である。

・以下の項目に沿って、森代表幹事から説明

【行政への提言】
1.行政担当者、ボランティア、教職員の人権研修を進める。
2.基礎教育の保障は国や自治体の責任であり、基礎教育を必要とする人の把握のための調査を実施し、「教育機会確保法」の普及を図り、識字・日本語教室や夜間中学校を増設するとともに、それらの広報に努めて、これに係る公的予算の確保や施設の提供などを進める。
3.教育・福祉・労働・産業・人権・国際交流など関連諸行政が連携して取り組む。
4.ボランティアや学校と行政の役割及び相互の関係について、協議を密にする。
5.識字・日本語教室や夜間中学校の開設・充実・広報を活発にし、予算を増額して学習者の実態に即した設備の整備や経済的援助を行う。
6.特に識字・日本語教室については、経費の負担や場の確保、行政担当者の位置づけの明確化、教室への関わりなどを進め、ボランティアの関わる教室の自主運営を尊重しながら、学習の条件整備にあたる。
7.ボランティアの幅を広げるとともに、その研修の機会の提供を積極的に行う。とくに研修内容として、学習者の社会的背景にある社会問題の学習の位置づけを明確にする。
8.すべての教職員が夜間中学校や識字・日本語教室についての理解を深めるように、養成・研修を行う。
9.日本語教育、特に初心者の日本語教育の公的保障機関を整備する。
10.識字・日本語教室、夜間中学校、地域組織等の連携・交流を進め、基礎教育の総合的取り組みを進めるための制度を確立する。公費を投じての国及び地域の識字・日本語センターの設置・運営も課題である。

【識字・日本語教室・夜間中学校への提言】
11.成人基礎教育の理念を追究する。
12.学習者の運営参画を促進する。
13.相互学習を盛んにし、個別学習と全体学習を組み合わせる。
14.学習者の生活に関する相談にも応じ、該当の窓口につなぐ。
15.具体的な事例に基づいて実践につながる人権学習がなされるよう、研修の機会を持つ。
16.日本語学習が同化主義に陥らないよう留意し、多民族共生を人権確立の観点に立って進める。
17.教材は既成のものに頼るのでなく、学習者に応じたものの創造をはかる。
18.地域組織や人権関係団体との連携を強化する。
19.識字・日本語教室、公立夜間中学校、自主夜間中学など基礎教育機関・団体相互の理解と連携を深める。

 繰り返し申し上げている通り、2019年の差別事象を発端として様々な取組を進めてきた。残念ながら去年の「よみかきこうりゅうかい」でも差別発言があった。今回は障害者問題に関わる差別発言だった。これでまた我々としては思いを新たにして取組を進めているところ。
どういう差別事象であったのか、なぜそれが起こったのか、我々はどうするべきなのかということを整理しており、ほぼできたというところまできている。はっきりしているのは、私たちの知識はアップデートしなければ、良かれと思ってした発言が差別になってしまうということはいくらでもあるということ。
さらに、ボランティアの意識調査の結果から、学習者の社会的背景について研修で学んだという人よりも、これからそういうのについても学びたいという人の方が多いということも分かった。学びたいのに学べていないという実態がある。
ぜひそれぞれのところで、教室が安心して学ぶ人権に満ちた場所になるように、様々取り組んでいただけるとありがたいと思っている。

補足説明  顧問 上杉 孝實
先ほど紹介のあった報告書において、報告が「Ⅰ~Ⅳ」、この提言が「Ⅴ」という形で出ている。そのⅣまでは、それぞれ夜間中学校や識字・日本語学習に関係している方々からの調査の分析と提案が書かれている。それに依拠しながら、この提言が出されている。それぞれの提案の方も報告書から読み取っていただくとありがたい。
それから、人権学習プログラムを作るということで、この間いろんな取組、試みがなされてきた。そういった中で出てきた意見や考え方も取り入れて、この提言になっているということを付け加える。
各項目の具体的な面は森さんから解説があったから付け加えることはないが、例えば、4ページの5は具体的には書いていないが、「大阪市も交通至便な地の夜間中学校を維持すべきである」というのは、先ほどから話題になっている夜間中学校の数を減らすようなことがあってはならないということを意味している。もちろん増設も大事なことである。
最後のまとめも少し難しい文章表現をしている。例えば、識字の複数性ということを書いているが、これはユネスコの、識字というのは何か決まりきった文字を学ぶというものではなくて、いろんな文字とか言葉があり得るのだということ。これが良くてこれは駄目だというような、そういう捉え方というものは問題だということ。方言なんかもそうで、方言ということで排除の対象になってきた。今はそんなことはないが、そういうことがあってはならない。それぞれの地域の特性とか人びとの想いというものがこもったものを大事にしていこうということがそこに込められている。
批判的識字と批判的教育もやっかいな表現かもしれない。要するに、文字を学んだり、あるいはその教育そのものに取り組むときに、やはり私たちとすれば、今の社会というもののもたらしているいろんな問題というものを、文字を学びあるいは教育に携わる中で、考えていってより良い社会をつくるという方向で、文字を使い、あるいはその学んだものを生かしていくということをしなければならない。そういう意味で書いている。これはユネスコなどとの動きと連動していることだとお考えいただければありがたい。

[2]各領域から(提言についての意見等)
藤井 英美子さん(日之出よみかき教室 木曜日)
こんにちは。日之出よみかき教室(木曜日)の藤井英美子です。みなさんの前でみんな一緒に楽しくこんな話できて、勉強させてあげられてありがとうございました。ちょっと少し緊張していますけど、この席を立てて喋ることもみんな、日之出よみかき教室のおかげさまで、この席を立って話ができるけど、私も初めて日本に来てもう30年以上になりましたけど、日之出よみかき教室をしてることは、わからないまま7年近くになりましたけど、今はいろんな一般的な言葉とか分かんない言葉をちょっとメモして、森さんにちょっといろんなちょっとしつこく教えてもらったり、それで、今、話ちょっといろんな細かいことをちょっと教えてもらっています。あとは、今よみかき教室で勉強することも、最初は慣れる前は、日本の国語みたいにいろんな文章を教えてもらったり、あと漢字ドリルみたいなことを全部教えてもらったんですけど、だんだんちょっと。いっぱいできる会話とかがね、あとみなさん、いろんな国から来た人は、自分の家から日記みたいな文章書いて、またそれ持って帰ったものを菅原さんといろんなボランティアが、細かいことを今教えてもらう状態で、感謝しています。あともう一つは、やっぱ国が違うから友だちもあんまり少ないけど、よみかき教室通ってから、いろんなところを、姫路からあっちこっちを全部経験させて、人の前でも堂々と喋りもできましたよ。あとは、何かありますか、緊張して少し。

<教室に通うようになったきっかけ>
私も日本来て、あちこちパートをちょっとしながら、韓国店をちょっと立てて、それで商売しているんですけど、子ども、娘も成長し孫も恵まれて、孫が小学校帰るときに、たまたまチラシを持ってきて、おばあちゃんこれ、これこれがあるけど、どうか言うたときに、読み書き、読み書きなんかな、わからないから一応、私も性格がちょっとしつこい面があるからから電話しました。電話したら、日本の漢字とかいろんな教えるところから、ちょっと仕事終わって帰るまでできる時間から、7時から9時までの話を聞いて、それから通い始まったけど、いろんなことですごく親切に教えてもらって、それからずっと分からないまま今が7年近くになりましたけど、本当に通って良かったと思うのが、今でももうチクチク思うし、あといろんなところ行くたびに、ちょっとおしゃれが気にして、そこを自分なりには成長するなと思っています。それとあと何かありますか。

<全国識字経験交流集会に参加して思ったこと>
まあ、結構大きい会場でいろんな地域からみんな集まって話ができたけど、すごくええ勉強したなと思って。まあ堂々に話をしたけど、だいたい今の言葉と同じですね。やっぱり初めはいじめもあったし、あと仕事をしながらでも仕事をさせてくれなかったし、それでも我慢かもしれんけど、昔比べたら今はもう本当平和になりましたね。私は韓国から来たけど、昔は韓国のイメージがすごく悪かったんですよ。にんにく臭いとかかな、キムチ臭いとか、いろんな事あったけど、仕事行くたびにキムチも食べるのを我慢したり、にんにくも我慢したり、今は堂々に食べていますけど、今は韓国より日本人の方が余計キムチに、はまっている感じに。あとは、もう昔比べたら今はやっぱネットがあるので、みんなあちこちよみかき通って、本当に一生懸命やっぱ日本語を勉強するんですが、昔に比べたら今は若い人にはもう負けるぐらいに、すごく勉強している感じしますね。今最近、よみかき通ったタオさんもベトナムから来たけど、なんか来てあんまり1か月もなってないけど、すごく日本語が上手いし、一生懸命教えてもらったり、勉強する姿みたら、やっぱし、私もやっぱりちょっとなまくらしないで、もうちょっと勉強しなかったらあかんなと思っている、今は。

<日之出よみかき教室文集より>
私の原点はお母さんの言葉。兄弟3人の中の女の子に生まれ、小さいときからものすごく欲張りで、兄弟喧嘩ばっかりしていました。例えば、近所の人でも、女の子より男ばっかりと喧嘩し、喧嘩に負けた人からいろんな物を投げて公園に逃げるのが私の特技でした。お母さんに心配をたくさんかけたと思います。長屋で住んでいましたけど、その大家さんやその息子共によく喧嘩し、大家さんに追い出され、引越しもしました。そういうことが何度もありました。そんな迷惑ばっかりかけた私でしたが、お母さんは、元気な証、体を動かすと幸せ来るよと、その言葉が20歳になり日本に来て言葉の壁や子どもを育てる中でいろいろな大変なこともあったけど、そのたびにお母さんのあの言葉を思い出して、今ここまで来られました。今は孫にも囲まれ幸せです。以上です。

木本 久枝さん(住吉輪読会)
みなさん、こんにちは。本日は大変ご苦労さんでございます。私は住吉の輪読会から参りました、木本久枝といいます。今年、89歳になりました。耳がちょっと障害でね、言葉がうまく出ない場合があります。よろしくお願いいたします。
それでは、私の提言としまして。一つめを読んでみたいと思います。2019年10月に、第30回目のよみかきこうりゅうかいの中で、生じた差別発言について、私の思ったことを言いたいと思います。分科会の中には、行政の方や、教師、そのほかボランティアの方たちがいらっしゃったと思いますが、なぜ差別発言が見抜けなかったんですか。人権について学習が足りなかったのだと、私は思いました。すぐにこの内容のことも、何か月もかかった。どういう内容かなかなか分かりませんでした。人権について学習が足りなかったのだと思っています。だから、研修の場をもっともっと増やしてほしいなという風に思っています。私たちの先輩たちがあの二文字のためにどれだけ苦労したか。ただの文字じゃないんです、二文字。どれほど泣かされてきたか、そのことをよく理解してもらいたいと思います。
二つめの、基礎教育を必要とする人を把握するために、調査の実施をしてもらいたいなというふうに思っております。例えばね、こんなことがあったんです。実は私の親しい人から、署名を頼まれました。そして一人でも多くの人に、署名をしてもらおうと思って、道でばったり会ったおかあちゃん、60歳ぐらいのおかあちゃん、内容を言って、署名をお願いできますかって言ったら。「ねえちゃん、私、字をよう書かんのよ。」こういう返事が返ってきて、私はすごいショックを受けました。それで、隣保館を覗くように、何度も、何べんも説得しています。このように、よみかきに不自由にしている人がまだまだいてるんです。
三つめ。夜間中学とかね、識字教室のことを、まだまだ知らない人がたくさんいるんです。メディアなどを通して、広くアピールしてもらいたいなという。夜間中学2校が、廃校になるとかいうように、署名してもらうときも行きました。その時も、「えっ、そんなタダな学校があんの。タダの識字があんの。いやあ、そう。」と、そんな状態でしたからね、はい。もっともっと知ってもらいたい。
四つめはね、教室で学習するだけではなくて、私たちの方に教室だけなんです、今は。特措法が切れる前は、あちこち行かしてもらいました。そういうことで、場の、識字同士の場、教室とね、交流がしたいと。また夜間中学校と交流がしたい。そんなふうに思っているんですね。もっともっと、交流ができたらね、学習がもっともっと豊かなものになるんじゃないかな。そんなふうに思っています。
最後になるんですけど、住吉輪読会が57年目を迎えたんです。一緒に闘ってきた大切な仲間が、梶川田鶴子さんが去年亡くなられた。その志をしっかりと受け継いで、識字の長い歴史を語り継ぐ人を、育てていかなければないな。そんなふうに思っています。以上です。ありがとうございました。

門脇 勝さん(夜中生徒会)
まずは、門脇と申します。よろしくお願いいたします。30回おめでとうございます。夜間中学生として言うのは、今もみなさんがおっしゃっていましたけど、識字も一緒ですね。「夜間中学って何?」って聞かれる。僕の友だちでさえ。夜間中学行ってんねん。「夜間中学って何?」これが現実です。
そして、うちの学校には、生徒会の私の、一緒に活動してくれている生徒会の中には、副会長でね、識字から来られている方がおられます。副会長で、豊中四中の上田正勝さん言うんですけども、その方が必ず言います。「先生、みんな人権教育してる、知ってる?」そして彼は言います。「文字書かれへん分かれへん。」これね、私にかえって、ほんまに自分が恥ずかしい。分かっていたような顔してたんやね。だけど、ほんまに差別って、無くなっていません。これは、教育を受けるものとして、あってはならんことやというふうに思っています。差別で教育が受けられへん。こんなアホなことあります? 僕もそんな差別から、今の夜間中学があるんですけども、彼なんかでも一緒です。
60年間、70年間、学校に通ってなかった人が、こないだ、たった10日ぐらいかな。2,3日やったかもわかりません。私の隣に座りました。そのときに、机を椅子を愛おしそうに撫でて、「これが学校の机か。これが学校の椅子なんや。」彼女は今、こないだちょっとお見かけしたんですけど、実は先生にも誰にも内緒でちょっと行ってみたんです。そしたら今、介護に通ってはります。あの、彼女の中でその何日間は最高の期間やったんやないかなというふうに思っています。
夜間中学って、僕も育ててもらっています。こんな偉そうなこともみなさんの前で言えるようになりました。めちゃくちゃヤンチャやったんです。何も分からんかったんです。そやけど、育ててくれています。いろんな方のお世話になっています。学校の先生、仲間。みんな私の財産です。私は、学校の先生から、実は差別を受けて学校へ行く、毎日行ったんですけど、それは母親のために行っただけで、自分のためには行っていませんでした。そして、色んな方の今、何百人という方が僕を支えてくれています。それで人権、学ぶこと全ての人に学びをいう形で、森先生や丸山先生、いろんな方のお世話で、おそらく日本で初めてやと思います。僭越ながらシンポジウムをやらせていただきました。お世話になりました。ありがとうございます。
そして、今、みなさんの紹介されたようにピンチです。これ、わたしのメッセージです。今現実これですわ。ちょうど今日居てはったんやけど、ちょっと居てはれへんくなったんですけども、教育ね、大阪市から来られている方。無くなる。2校が廃校になります。こんな、森先生も、さっきもおっしゃっていましたけども、一番のターミナルであるこの夜間中学、学びの場が無くなるんです。こんなアホなことあります? ほんで、さっきお聞きしたら「機会確保法」、それにのっとってやる。片っぽで、潰す言うてんのに何やねんというふうに思いを持って話聞いておりました。
最後にね、時間がないやろうと思うんで、しょうもないこと喋ってとりとめもないことになりますけども、今いろんな団体が、私も含めてですけども、夜間中学校無くすな、という感じで頑張ってくれています。同窓会もしかり、それから、育てる会、それも然り。だけどそれ一つにまとまってやったら、もっと良くなると思います。これで一つお願いがあるんです。この場で公言して、はばからんと思います。森先生、一つ、まとめていただけないやろか。ほんまね、夜間中学、私がなんぼ頑張っても、未来永劫続くと思うんです。続けて行かなあかんと思う。ですから、各団体が勝手に自分らのことを言うてたって、これ前に進まないのでね、一つ私らも、あと何年かしたら、何年かいうよりも目の前ですけども、もうやめていかなあかん。生徒会長や言うて、偉そうなことを言うてられない。ずっと続いて行く。ほんで今度後に続く人、育てます。ですけども、その人もいずれ辞めていく。そういう中で、やっぱり夜間中学って潰したらあかん。識字も一緒。ですから、ここの場にも、これで2回めかな、この教室に来るのもね。ですから、そういう形でいろんなところと僕、勝手に行って、勝手にいろんな人と会ったり、なんやかんやして支えていただいておりますので、一つその辺よろしくお願いします。今、ちょっと後ろで聞いてはる人あると思うんですけど。頼みましたで。いけてます。OKもらっていましたので、はい。一つお願いします。そしてこれからも、夜間中学校無くさないように、一つ応援、よろしくお願いいたします。失礼いたします。ありがとうございました。

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