識字・日本語センター

第26回 識字・日本語連絡会総会<報告>

26回 識字・日本語連絡会総会

日時:2019年5月25日(土)
  1300分から
  HRCビル大ホール

司会: 柴田 亨

 

第1部
主催者あいさつ(森 実 代表幹事)
第1部は、DVDの上映と、福岡で行われた日韓のワークショップの紹介になっています。前半のDVDでは夜間中学の現在の様子が分かりやすく映し出されています。登場人物の中には後半のワークショップ参加者もおられます。それでは始めさせていただきます。

 

DVD「こんばんは」上映
特別報告:日韓の識字・基礎教育学習者による共同宣言づくり(ワークショップ参加者:金喜子さん、森 実 代表幹事)
今年3月に福岡県で行われた「日韓の識字・基礎教育学習者による共同宣言づくりワークショップ」の報告をさせていただきます。総会資料の2、3ページに詳細を記載しています。なお、写真については前方のスクリーンでも映写します。

全体像ですが、2016年の教育機会確保法がきっかけで基礎教育保障学会が設立されました。学会では夜間中学、自主夜間中学、被差別部落の識字学級、日本語教育などに関わる人々が一緒になって活動してきました。会長は初代から上杉孝實さんです。
学会の取組みの一つとしてトヨタ財団から助成を受けて日韓の協力プログラムが進んでいます。プログラムの一環として学習者による共同宣言づくりが始まりました。韓国では識字のことを「文解(ムネ)」と呼んで取り組んでいますが、韓国の「文解」と日本の識字をまとめてブックレットにする取組みも進んでいます。両者が今年の9月下旬に韓国で行われる大きな集まりで共同宣言を発表することになっています。今、共同宣言は草案段階ですが、学習者を始め、ワークショップ参加者の方々に読んで頂き、内容を確認していただいた上で、9月に完成する予定です。
日韓の共同宣言づくりワークショップについては、最初、韓国から学習者の共同宣言をつくろうと申し出があり、日本と韓国から学習者が集まって交流して、その交流の声をもとに宣言をつくろうということになりました。ワークショップは福岡県にある福岡大学のセミナーハウスで行われました。福岡県は日本の部落の識字運動が始まった地域です。今回残念ながら福岡の識字学級に参加頂けませんでしたが、そのような場所で開催されたことは意味があることと思っています。

日本・韓国から学習者は17人参加し、全体では60人くらいの集まりでした。3日間の日程で地元の自主夜間中学や地場産業の施設を見学したりもしました。
ワークショップの中心となる活動では、最初に学習者からどのような場所でどのように学んでいるのかについて日韓それぞれからアピールを行い、その後4つの小さなグループ(1グループ10人ぐらい)に分かれて話し合いをしました。各グループで、なぜ子どもの頃に学べなかったのか、何をきっかけにして夜間中学や識字教室に通うようになったのか、通うようになってどんな変化が自分に現れたのか、さらには、世の中や政府にどんなことを訴えたいのかといったテーマについて2日間にわたり話し合いをしました。話し合った内容について全体の場で発表を行い、最後に「自分にとって識字とは?」というテーマで17人の全ての学習者が発表をしました。

日本では九州・沖縄からの参加者もいましたし、北海道からの参加者もいました。大阪から、部落の識字教室学習者1人、夜間中学校卒業生1人、合わせてお二人が参加されました。私も含め他にも数人が参加しました。
それでは、今から、私と、参加された夜間中学校卒業生の金喜子(キム・フィヂャ)さんでお話しさせていただきます。
最初に、金喜子さんから印象に残っていることを話していただきます。


(金喜子さん)

こんにちは。私は中学校卒業と同時に今回、福岡県に連れて行ってもらいましたが、卒業してもこのように呼んでもらえることに感謝しています。どこに行っても勉強になるので本当にうれしかったです。勉強してこうして表に出られるんだなぁとつくづく感じています。

人間は一人一人話をしてみると、すごく情がわいてきて仲良くなれますし、勉強することで人は変わっていきます。本当に学校のおかげだと思います。

勉強していないと自分を表に出さないです。昔の私はいつも後ろにいました。今回参加して一人一人の思いが伝わってきたのでいい勉強になりました。人間は変わるんやなぁということが分かりました。


(以下は、金喜子さんと森 実 代表幹事との対談の内容)

(金喜子さん)
ワークショップには、いろんな所から学習者が参加されています。私たちのグループでは韓国からお二人の方が参加されていました。うち一人の87歳の学習者の話がおもしろく、私はすごく印象に残っています。学びたいことがいっぱいあるので、2年後にもまた日本に来たいとのこと。それが生きがいとなっているようです。言葉が違っているということを忘れるぐらい自分の生い立ちについてお互いに熱く語りあいました。

もうお一人は、息子の妻さんが冷蔵庫に貼ってくれていたメッセージのことを話してくれました。言葉が書いてあったのだけれど、読み書きできないため、意味が分からなかった。友だちに「読んで」と頼むのもなかなかできなかった。「お母さんありがとう」と書いてあることが分かった。その後、文字の読み書きを学び、4年間かかって、ようやく返事を書くことができた。そんなお話でした。

また、沖縄の方とも話をしました。その方は沖縄の方言で話されていたのですが、お孫さんがそれを理解できなくなってきたそうです。それで、教室で標準語を学ぶことで自分の孫と会話ができるようになったとのことでした。


(森 実 代表幹事)

韓国の今の「文解(ムネ)」
教育の中心になっている世代は1950年代に子ども時代を過ごした方々です。先ほどの87歳の方は戦争の中をくぐってこられましたが、その他の方々は1950年代に子ども時代を過ごした方々が中心で、日本が韓国を植民地にしていた時期の後に生まれ育った方たちだということになります。
私は1990年の国際識字年のころから韓国と交流しています。当時交流するにあたって、韓国の「文解(ムネ)」問題は植民地化の中で起こった問題であるからと、日本との交流に反対していた人もいました。しかし、交流が数年たったとき、その反対した方も、「何年か継続的に交流する中で日本にもいろんな人がいることがわかった」と言われていました。当初反対していたということも、その時に初めて聞きました。

また、もう一人の方は、川崎市で交流が行われたときの発言が印象に残っています。それまで日本語を話さなかったその方がスピーチを日本語でされたのです。「私が日本語を話せることを知っている人はこの中にほとんどいないと思います。植民地時代の体験があるので、わたしは『日本語を絶対話してやるか』とずっと思っていました。でも、ここへ来て交流して日本にもいろんな人がいるのだと思いました。特に川崎の日本の方々は川崎にいる韓国人を支えてくれているのがよく分かりました、この人たちと交流したいと思った。他の人たちは英語で交流していました。私に残された手だては日本語を使うことでした。それで初めて日本語を話したいと思いました。」そんなふうに話されました。その当時の交流は日本による植民地支配抜きでは語れなかったのです。

今回の日韓交流では直接植民地時代のことがあれこれとやりとりされたわけではありませんが、私たちは、日韓の交流を考えるとき、その点を抜きに出来ないことを忘れてはならないと思います。

では、残りの時間で共同宣言の草案を紹介します。現在は、まだ草案段階なので、具体的な文言は、控えさせていただきます。


第2部 総会
1.主催者あいさつ(森 実 代表幹事)

みなさん、本日はお忙しい中、ご出席いただきありがとうございます。今年度の総会では、世の中の動きを受けて、我々がやるべきことは何かということをじっくりお互いに確かめ合いたいということで、グループに分かれた話し合いを取り入れています。みなさん、お一人お一人の思いを受け止めて先のことを考えたいと思っています。どうぞ宜しくお願い致します。


2.来賓紹介
大阪府教育庁市町村教育室地域教育振興課長 北川 辰弥
大阪市教育委員会事務局生涯学習部生涯学習担当課長 松村 智志
堺市市民人権局人権部人権推進課長 松尾 敏之


3.来賓あいさつ

(大阪府教育庁市町村教育室 地域教育振興課長 北川 辰弥)
識字・日本語連絡会第26回総会の開催にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
皆様におかれましては、日ごろから府内各地域で、識字・日本語活動を通して社会教育の推進にご尽力いただいておりますことに、心から敬意を表します。また、このようにたくさんの皆様のご参加のもと、本総会が開催されますことを心からお慶び申し上げます。
私自身、先日ある教室を訪問し、学習者や学習支援者の方々が活動されている様子を見学させていただきました。学習者の方たちは、支援者と1対1になって話をしたり、読み書きの練習をしたりするなど、いきいきと学習されていました。
また、外国人学習者の方は、日本の生活習慣について支援者から説明を受けるなど、教室は日本語の読み書きだけでなく、多様な学びの場であることを実感いたしました。
皆様ご存知の通り入管法が改正されたことにより、今後、在留外国人の方々の増加が予想されますので、識字・日本語教室へのニーズは一層高まってくるものと考えております。
大阪府では、大阪府識字施策推進指針(改訂版)を踏まえ、識字施策の推進に努めており、大阪識字・日本語協議会が平成28年3月にまとめた「大阪府における識字・日本語学習における課題整理報告書」に基づき、平成28年度から課題を解決するための取組みを進めてきたところです。
今年度も、文化庁事業を活用して、外国人の方々に寄り添う支援者を養成する講座を実施するとともに、文化庁の「標準的なカリキュラム案」に準拠した大阪の実情に応じた教材と教案を作成し、教室に配付するなど、府内の識字・日本語教室の支援力強化を図ってまいります。
最後になりましたが、貴連絡会のますますのご発展と皆様のご活躍を祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。


4.議 事

議長には東 裕子さんを、書記には岡田耕治さんを選出
1)2018年度活動報告ならびに2019年度活動方針案(提案:森 実 代表幹事)
2018年度の活動をふりかえって)
2017年度の段階で私たちは話し合いをし、以下①~⑦の7項目を活動の柱としてきました。

①「識字・日本語」という概念の整理と理念の明確化
②識字・日本語教室運営の充実
③学習者を広げる方法
④学習者によりそう支援者が育つ筋道の整理
⑤学習のありかたの整理と学習教材づくり
学習教材とはプリントだけではなく学習活動を表す
⑥地域連絡会どうしの連携強化、行政との協力の拡大
⑦政府や自治体への政策提言


2019年度の方針)

議案書10ページの「わたしたちを取り巻く状況」のところに現在の教育を捉え直す上で参考になる「ペギー・マッキントッシュによる山脈図」について記載しています。これは、アメリカをベースに現代社会を図式化したもので、わかりやすく現在の問題を示しています。社会全体は、山脈に例えられています。そのトップには、白人・男性・英語系・キリスト教徒(WASP)が君臨しています。女性や黒人はトップにのぼり詰めたり、居続けたりすることが困難です。社会的には、下から上に上がるはしごがあると思い込まれており、その典型が学校だということにされています。しかし実際には、誰でも登れるわけではありません。しかも、このはしごを登ろうとする人たちは、知らず知らずのうちに上だけを見るようになってしまい、社会を広く捉え直しにくくなっていきます。ときには、下から自分を追い越そうとする人を蹴落としてしまったりします。社会を支える民衆は、底辺層を構成しています。この人たちは、さまざまな差別により分断されています。たとえば白人底辺労働者は黒人や移民労働者に反発を抱いていたりします。けれども、「これら底辺層を支えている人たちは、実際の体験を交流すればつながれる」とペギー・マッキントッシュさんは言います。これは、とりもなおさず識字で大切にされてきたことです。このお話は、日本の状況を考える上でも大切にされるべきではないかと思います。

日本では、国内の識字問題への施策はほとんどなく、移民という位置づけを欠いた外国人受け入れに関わる施策も明確な方針がないまま進められてきました。しかし、4月からの政府の外国人労働者受け入れ枠大幅拡大政策のもと、文化庁の事業は予算面でも大幅にアップし約8億円となっています。

ここで、先ほど述べた7項目を今年度も気持ちの上で大切にしながら活動を進めていきましょう。全ての活動の中でこの7項目を意識するのが今年度の重要な柱になります。

なかでも、1990年に始まった「よみかきこうりゅうかい」が今年で30回を迎えます。これは記念すべきタイミングであり、これまで議論して整理しきれなかったことをこの30回を機に整理し直そうと考えています。具体的に、特に重視したいこととして、お互いの生い立ちを交流し合い、そのことを通してつながっていくことを大切にするような集まりにしたいと思います。

また、識字・日本語学習研究集会では上記7項目を位置付けて研究集会を開こうと考えています。識字・日本語ネットワークの充実と拡大では、これまでも色々なところとのつながりはできていますが、このタイミングにお互いのネットワーク(ブロック単位も含め)をさらに広げていくことを考えています。

識字・日本語センターの活動展開では、識字・日本語センターは2013年から予算のない状態を強いられており、今は完全にボランティアで活動されています。この状態をいい方向に持っていくために行政との連携も図りながら地力を蓄えて、学習者になりたい一人一人に情報が届くように進めていきたいと考えています。

「識字・日本語活動ガイドブック」作成については、すぐにはできないですが、数年後にはガイドブックを作って①から⑦までの中身が多くの人にすぐ分かるものを完成させたいと考えています。

自治体や政府への政策提言では、国が予算枠を広げようとしているのでそれに応じた取組みを現場で行って、それを行政に受け止めてもらって、行政から国に働きかけてもらおうということを考えています。


2)2019年度活動計画案(提案:柴田 亨 事務局長)

活動計画案(議案書参照)を提案します。


3)2019年度 役員・加盟団体等案(提案:森 実 代表幹事)
役員等案
代表幹事  森  実
副代表幹事 岩槻 知也  高橋 定  東 裕子
事務局長  丸山 敏夫
幹  事  加盟団体から選出された人
個人幹事: 熊谷 愛  古川 正志
顧  問    上杉 孝實
加盟団体一覧 (議案書参照)


質疑応答

・議案書8ページで「2015年度から『大阪識字・日本語協議会』へと再編成して」とあるが、「2013年度」の間違いではないか?
(事務局)
・事実について確認をして、必要に応じて修正させて頂き、お知らせします。
(*その後、2013年度が正確であると確認されました。修正版を配付する予定です。)
(議長 東)
提案に対して一括して拍手で承認


総会終了
ワークショップ-活動方針を受けて-
みなさんで話をして活動方針を共有するためにワークショップを行います。6つの班に分かれ、次の3つのテーマについて話を進めて頂きます。

  • 識字の理念
  • 教室の運営
  • 連携

 以上三つのポイントとつなぎながら、教材の作成(学習活動の意義の整理)など、自由に話し合いを進めてください。


各班からまとめの発表

50周年になる教室が幾つかあって、教室のイベントの内容について話し合いました。鉛筆作文は困ったときに使えるのでいい活動です。

夜間中学校の現在の状況について話し合いました。外国の方が増えており、教材で悩んでいます。形式卒業生の件で外国の方が思っている日本語学校の流れと、形式卒業生に提供できる内容について双方の異なるニーズに応えるのが難しくて悩んでいます。

夜間中学校の再編整備に関わって、今まで中国の方は場所が遠くて来られなかったようですが、再編により近くに夜間中学校ができたために多くの方が来られるようになりました。他でもニーズがあるように思います。ニーズは、こんな風に、近くに学習機会が出来ることによってあらわになってくるものだと分かります。

夜中と識字の共通の課題として学習者の状況で形式卒業生が夜間中学に行きにくい状況があるとのことでした。若い層の受入れをどのようにしていくかが今後大事になっていくように思います。夜間中学で学ぶのに9年の上限がありますが、高齢の方は夜間中学を卒業したら次にどこに行ったらいいのだろうという悩みをもっておられます。今の状況では、夜間中学校を終わったあとに学ぶ場所は識字教室だと思いますが、どうも今まで双方の間で交流がなかったようで、識字・日本語教室と夜間中学との交流をもっと進める必要があると思います。

教材について、多くの教室で「みんなの日本語」を使っていますが、単に日本語能力を上げることに特化するのは違うように思います。学習を通して、その人が何をしたいのか、そして次に一歩踏み出せるような学習が必要です。みんなに適する教材がある訳ではなく、学習者ととことん関わる中でしか教材は見えてこないのではないでしょうか。それは非常にしんどいことですが、それを作っていかないといけないのではないかと思います。

日頃から識字・日本語教室や夜間中学の学びが非常に必要であると思っています。夜間中学には、ネパールやベトナムのニューカマーの外国人の方、中国からの帰国者の方、その二世・三世の方々、障がいのある方、不登校だった方、いろんな方々が学んでおられますが、夜間中学が大切にしてきたことをやっていく必要があるのではないでしょうか。生きる元気、意欲が沸く教室であって欲しいと思います。


まとめ(森 実 代表幹事)
みなさんからの発表を伺って、次の3点にまとめることができると思います。
今年は「〇〇周年」の年!
いろいろな人がくるようになって何を大切にするか?(梯子と横つながり)
教材(学習活動)は?
→ ・基礎スキル ・場面スキル ・人生スキル

今年一年、お互いの活動を通していろんなものを作って、また来年度の総会やいろんな場面で共有していくことをお伝えしてまとめとさせて頂きます。

閉会のあいさつ
丸山事務局長

退任のあいさつ
柴田前事務局長

※当日は、書籍販売、識字・日本語センターへのカンパ(書籍配布とおして)、韓国文解教育にかかわる資料等の展示も行いました。